共感するイノベーション インクルーシブデザイン - 10年の歩み 展

九州大の平井康之先生から案内をいただいて、行ってきました。
共感するイノベーション インクルーシブデザイン - 10年の歩み 展

インクルーシブデザインの産みの親である Helen Hamlyn Centre for Design の上席特別研究員のジュリア・カセムさんがイギリスでの活動を終え、日本に帰ってこられたとのこと、またインクルーシブデザイン研究所の代表になれたことと、今回の展覧会にて講演を行うとのことで、ジュリアさんからこれまでの活動のことを直接教えてもらえる大変貴重な機会でした。展示デザインは、娘さんのライラさんがされたとのこと。
ちなみに講演は日本語で行われました(一安心)。

●インクルーシブデザインの旅
・この旅は、日本から出発した。
・1971年、文部科学省の奨学生として来日、彫刻を学ぶ。
・日本では1960年〜1990年の間に5495の博物館ができる。
 アクセシブルの法律が定められた時でもある。
 物理的には入りやすい建物ばかり、
 しかしながら、心理面は貧弱なものばかり。
 単にいい作品を置くだけものもの、良いものを見せれば満足だろうという考え。
・美術館については、まずは障害のある人をターゲットにしてスタートするべき。
 私は、障害者の方が楽しめる美術展覧会を企画・開催した。
・99年 Helen Hamlyn Centre for design 設立
 研究員として参画。

●なぜ、タイプライターが生まれたか知っているか?
・どういうプロセスでできたか?
・それは、全盲の人が手紙を書きたい、キレイな字で書きたい、
 コミュニケーションを取りたいという欲求からできたもの。
・そのシナリオがエクストリーム
・他にも、トランジスタ補聴器のために作られた、
 チャールズ・イームズ義足を作った。

●なぜ、エクストリームユーザーなのか?
・エクストリームユーザーを理解すると、メインストリームのイノベーションが可能になる。
 逆にメインストリームからエクストリームは難しい。
・エクストリームは出発点が違う。

●インクルーシブデザインの基本原則
1.背景を理解する
2.仕組みを創造する
3.デザインの問題を理解する
4.1つではなく複数のシナリオを考える
5.コラボレーションする

●障害向け商品のステレオタイプの見方
・安全なもの
・退屈なもの、ダサいデザイン
・単純作業でつくるもの
・かわいそうだから買おう

●仕組みを創造する チャレンジドワークショップ
・毎年、DBAデザインチャレンジを実施
・障害者はモルモットではない。
 デザイナーの障害者へ対する見方、考え方を改善する。
・障害者と完全なデザインパートナーとなる。

●デザインの問題を理解する
(絆創膏のリデザイン)
全盲の人/足しか使えない人のためのインタフェイスはどうあるべきか、
・そもそも絆創膏は何であるか
・一番の問題はパッケージ

(携帯電話のリデザイン)
・ある老女のための携帯電話
・大きい電話であること、画面であること、ボタンであることではない。
・別のインタフェイスが必要、
 電話ではなく黒板のような
・問題は携帯電話の機能ではないということ。

●1つではなく複数のシナリオを考える 複数のシナリオを考える
・3種類の絵を見せられる(コールセンター、老人ホームに座る老女、トラック運転手)
・これらの共通点は何か?
・長く座る人のためのデザイン

●コラボレーションする
サラエボプロジェクト)
サラエボの財政状況の悪化
聴覚障害者の年金がカットされる
・働かなくてはならない
サラエボの印刷会社から依頼され、一緒にコラボレーションしてデザインプロジェクトをすすめる。
・スキルはあるが、デザインセンスはゼロ。
・みんながタバコを吸うという共通点を見つける
 街中の路上に、床にポイ捨てする、
・路上のタイルに灰皿を埋め込む製品を作ることで解決する。
・このことで、取り組むサラエボの人の気持ちがパッシブからアクティブに変わった。
・印刷会社からデザイン会社に変わっていった。
・地元、外とのデザイナーとのコラボレーションが始まった。

シンガポールでのワークショップ)
・テーマは病院のサービスデザイン。
・病院で働く人たちを中心したチームを作った、
 その中にインタラクションデザイナー、プロダクトデザイナーを入れる。
 病院で働く人たちは「言葉」でコンセプトを落とし込む、
 デザイナーは「ビジョン」でコンセプトを落とし込む。

●インクルーシブデザインとは
・プロダクトを考えるのではなく、プロセスを考える、設計する。
・正しい問いでなくては、いいデザインはできない。
・いいプロセスを設計しないと、いい結果が生まれない。
 それがクリエイティブディレクション
・エクストリームユーザーとやると比較的簡単に、いい問いが手に入る。
・うまく進めるには、エクストリームユーザーとのいいパートナーシップが重要。
・あくまでも大切なのは、結果ではなくプロセス。
・デザイナーは自分の箱の中に生きている、それがいいデザインを生むことにはならない。
・エクストリームユーザーを理解するコツは、一緒に出かけること、共に歩くこと。
 それがコンテクストにつながる。
・自分と全然違う人間と一緒に行動すること、会話すること。
・相手の望んでいる人生を知ること、。
・それも一人ではなく、たくさんの人を知ること。

以上