ストーリーとしての競争戦略
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
- 作者: 楠木建
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/04/23
- メディア: 単行本
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楠木健さんの著書。ものすごい骨太の一冊で、読み切るのに2週間かかりました。ハッキリいってスゴ本です。この本に出会えたことに感謝します。
ストーリーテリングワークショップからストーリーについて考え続けています。ストーリーの書き方については、先日の本で理解できましたが、どのようにストーリーを構想すればいいのかが消化不良でした。この本では、新製品・サービスの域にとらわれず、事業プラン、企業の20年先までを描ける壮大なストーリー作りについて語られています。いやぁすごかった!
●優れた戦略ストーリー、コンセプトを持つ企業
・アマゾン
モノを売るのではなく、人々の購買行動の意志決定を助けるサービスを提供する。
リアルな店舗の時代、成功のために大切なことは、立地、立地、立地。
我々にとって最も大切なことは、技術、技術、技術。
・アスクル
ペルソナ 久美子さんの救済、問題を解決する。
・スターバックス
第三の場所
・サウスウエスト
空飛ぶバス
・ガリバー
買取専門
・ホットペッパー
一人屋台方式
●戦略ストーリーとは
(※サッカーでの例え)
・ストーリーの本質は、部分の非合理を全体の合理性に転化すること。
・ストーリーは時間的な広がりを持つ。意志決定をすれば出来上がるものではない。
・ストーリーとは、2つ以上の構成要素のつながり。
個々のパスは静止画、
パスが縦横につながり、シュートまで持っていけた時、動画のストーリーになる。
・ストーリーが優れていることは、パスがきちんと因果関係でつながっている。
・ストーリーの最後にくるシュートは、「なぜ儲かるか」の論理にこだわる。
・戦略ストーリーは終わりから組み立てる。
・戦略ストーリーの評価基準は、ストーリーの一貫性。
・キラーパスこそが優れた戦略ストーリーの中核であり、
ストーリーの一貫性の基盤になっている。
・戦略を物事が起こる順序を練り上げる、つむいでいく。
●戦略ストーリー 5C
・コンセプトConcept(起)
・構成要素 Components(承)
・クリティカル・コア Critical Core(転)
・競争優位 Competitive Advantage(結)
・一貫性 Consistency
●コンセプトとは
・その製品・サービスの本質的な顧客価値の定義。
本当のところ、誰に何を売っているのか、という問いへの答え。
・「誰に」「何を」だけでは静止画。誰に、何を、の組み合わせを考える。
・「なぜ」という因果関係、動き。
・数値目標の設定は必要ではあるが、数字だけではコンセプトになりえない。
・誰を喜ばせるか、価値を提供するターゲットをハッキリさせる。
誰に嫌われるかをハッキリさせる。全員に愛される必要はない。
・人間の本性を捉えた骨太のコンセプトを作るためには、
その製品・サービスを本当に必要とするのは誰か、
どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、
顧客価値の細部についてのリアリティを突き詰めることが大切。
・コンセプトを考えるときは、営業やユーザーの声は聞かない。
自分の頭で深くじっくり考える。
・顧客が動くストーリーをどれだけ鮮明にイメージできるか。
・コンセプトが本質的な顧客価値をとらえていれば、
登場人物が自然と動き、ストーリーがどんどん広がり、具体的になる。
●競争優位性 他社との違いをつくる2つのアプローチ
1.SP: Strategic Positioning
・ものさしがない
・他社と違ったことをする
・ポジショニング
・シェフのレシピ
・企業を取り巻く外的要因を重視
・欧米企業
・何をするか、何をしないか、What
2.OC: Organizational Capability
・ものさしがある
・他社と違ったものを持つ
・組織能力
・レストランの厨房の中(素材、道具、腕、チームワーク)
・企業の内的要因に競争優位の源泉を求める
・独自の強みを持つ
・その会社固有の物事のやり方
・日本企業
・やり方、How
●クリティカル・コア(賢者の盲点)とは
・「それだけでは一見して非合理だけれども、
ストーリー全体の文脈に位置づけると、
強力な合理性を持っている」という二面性。
・マネできなかったのではなく、そもそもマネしようと思わせる何か。
・戦略ストーリーでは、部分的には非合理に見える要素が、
他の要素との相互作用を通じて、ストーリー全体での合理性に転化する論理。
外部環境に依存せず、部分全体の合理性のギャップに賢者の盲点を見出す。
・不確実性が外部の環境要因にあるのか、戦略の内部にあるのかの違い。
●持続的競争優位とは
・ある戦略がもたらす競争優位が長期にわたって持続するのは不思議なこと。
・ある企業が高いパフォーマンスを達成していれば、誰しも注目する。
技術や経営ツール、さまざまな成功要因はすぐに世の中に知れ渡る。
・しかし、強い企業は長期にわたって強い。なぜか?
・移動障壁の概念の存在。
・競合他社の自滅の論理がある。模倣、それ自体が差異を増幅する。
・ベストプラクティスといって、他社はこぞってその戦略を模倣する。
場当たり的に戦略を模倣しても、交互作用は発揮できない。
・その間、オリジナル企業は、せっせとストーリーに磨きをかける。
結果、より競争優位が確固たるものになる。
●ストーリーが失敗する例
・特定の「飛び道具」「必殺技」に寄りかかる
・「ポータル戦略」「顧客の囲い込み」「ソリューションサービス」という幻想
●競争優位 シュートの軸足
1.WTP重視 メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ
・WTP-C=P
Willingness To Pay (顧客が支払いたいと思う水準)
2.コスト重視 トヨタ
・シュートになるのは低価格ではなく、低コスト。
価格とコストは分けて考える。
3.ニッチ特化による無競争 フェラーリ
●決めること
・ゴール(長期利益)
- 目標(客観的、ドライ、クール)
- 目的(ホット)
・ツートップを決める
- シュート(競争優位、こちらが儲けるための内側の理屈)
- コンセプト(顧客価値という外側の理屈)
・パス
- OC
- SP
- 無競争
・キラーパス(クリティカル・コア)
●戦略ストーリー10ヶ条
1.エンディングから考える
2.普通の人々の本性を直視する
3.悲観主義で論理を詰める
4.物事が起こる順序にこだわる
5.過去から未来を構想する
6.失敗を避けようとしない
7.「賢者の盲点」をつく
8.競合他社に対してオープンに構える
9.抽象化で本質をつかむ
10.思わず人に話したくなる話をする