フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

読みました。

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み

日本におけるフューチャーセンターのパイオニアである野村恭彦さんの著書。
欧州の取組をそのまま取り入れるのではなく、日本独自のフューチャーセンターのあり方を説いた一冊です。
私自身、フューチャーセンターという言葉は聞きなれなかったのですが、そのスケールの大きな取組に圧倒されてしまいました。
ワークショップ、ダイアローグ、デザイン思考、FabLab、ファシリテーションを全部盛った感じでしょうか。
すごいことを考える人が世の中にはたくさんいるのですね。

●フューチャーセンターとは
・北欧の知的資本経営から生まれた「未来の価値を生み出すセンター」
・複雑な問題をスピーディーに解決するために、多様な専門家やステークホルダーを集め、オープンに対話する場
・対話のための専門空間、人と人とのつながり
・企業や社会の変革装置
・単なる施設の名前ではなく、ただの活動でもないもの
・創造的なワークショップのファシリテーションという「機能」を提供し、そこで対話やアイデア創出という「活動」を行う。
・新しい商品/サービスを生み出す企業イノベーションと、世の中にある問題解決を目指した社会イノベーションが両方同時に行える。

●フューチャーセンターの目的
・企業にとって、社会問題こそイノベーション活動の中心に置かれるものになる
・未来を自分たちの力で創りだすこと
・複雑な問題の解決が最大の目的、複雑な問題には唯一の論理的な答えがない
・問題を分割して専門家が解決するパラダイムではなく、本質的な問いから始まる多様なステークホルダー間の対話による創発パラダイムへ変わる
・未来のステークホルダーが集まって対話をすることで世界は変わっていくという「思想」
・未来を創りだすには、対話の場、強い意志、正しいプロセスが必要

●フューチャーセンターの活動、役割
・未来シナリオ作り:10年〜数十年後の社会の姿を具体的に描きだす活動。
 長期計画ではなく、リスクマネジメント。複数の未来シナリオへの集団的意識が現在のしがらみから解き放つ。
・マインドセットを変える:創造力と直観力を高める役割。

●企業がフューチャーセンターに取り組む理由
レベル1.企業の中に対話の文化を育みたい
レベル2.組織横断でスピーディーに問題解決できるようにしたい
レベル3.社外ステークホルダーとともにイノベーションを起こしたい

●社会イノベーションを起こすには
1.ビジネスセクター(企業)
2.パブリックセクター(行政)
3.ソーシャルセクター(NPO)
上記、3セクターのルールを同時に変えること。

●フューチャーセンター 6原則
1.想いを持った人にとって大切な問いから、すべてが始まる
2.新たな可能性を描くために、多様な人たちの知恵が一つの場に集まる
3.集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果に自発性を引き出す
4.共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される
5.あらゆるものをプロトタイピングする
6.質の高い対話が、これからの方向性やステップ、効果的なアクションを明らかにする

●フューチャーセンターディレクター
・フューチャーセンターの経営者
・扱う問題の領域を決める
・持ち込まれた社会的課題のうち、どのテーマを取りあげるかを判断する
・テーマを社会改善に向かって大きくストレッチさせる
・活動をとおして、組織改革や社会変革をデザインする
・自らの強い想いを持ち、他人の想いを引き出し、パワフルな問いを立てられる人
・情熱、好奇心、共感力、それらを統合した人間的魅力がある人
・ネットワークで社会を変えていく想像力

●フューチャーセンターディレクターに必要な6つの能力
1.卓越した「善い」目的をつくる能力
2.他者と文脈/コンテクストを共有して場を醸成する能力
3.個別の本質を洞察する能力
4.個別具体と普遍を往還/相互変換する能力
5.その都度の状況の中で、矛盾と止揚しつつ実現する能力
6.賢慮を育成する能力

●フューチャーセンター 3つの方法論
1.対話の方法論
2.未来思考の方法論
3.デザイン思考の方法論

●フューチャーセンターセッション
・対話、未来思考、デザイン思考の力でブレイクスルーする場
・複雑な問題にはシンプルな最適解は存在しない
・成功の鍵を握るのはファシリテーター
・場を信頼し、集合的な知恵を引き出す力を持つ

●コミュニティ中心経済の10原則
1.これからの社会は、コミュニティ生成力が成功指標
2.これからの社会変化は、相互につながったコミュニティによって伝播する
3.これからの企業は、市場からではなくコミュニティから発想して価値をつくる
4.これからのイノベーションは、新たなコミュニティ単位の発見、可視化、活性化を実現すること
5.これからのワーカーは、組織からではなく、個のつながり(コミュニティ)で仕事をつくる
6.これからの仕事環境は、組織に囲われた場所ではなく、コミュニティに開かれた場所7.これからの人材育成は、多様な人とのつながりにより、冒険の機会をつくる
8.これからの組織は、役割ではなく人として存在できる安心な場(コミュニティ)になる
9.これからの地域コミュニティは、世代や地域を超えてつながるための主体性を引き出す劇場を持つ
10.これからの経済は、コミュニティを中心に動くようになる

●今日の一枚+1枚