プロジェクト GT-R

読みました。

プロジェクトGT‐R―知られざる成功の真実

プロジェクトGT‐R―知られざる成功の真実

ニッサンGT-Rのプロジェクトリーダー 水野和敏さんの魂のこもった熱い熱い一冊。
あまりの熱量に圧倒されます。リーダーかくあるべき、スゴ本でした。
ビジネスマンであれば、大学の先生が書くアカデミックな分厚いシーダーシップの本を何冊も読むよりも、これ一冊を読めば十分という気がします。

●クルマづくりとは
・クルマは、当たり前のものを当たり前のようにつくり込んで、お客様の感性で評価されるもの
・常にクルマのゼロ点へ回帰し、原点から積み上げていくクルマづくり
・技術屋が正直に原点回帰し、正直につくる

●間違ったクルマづくり
・人の意見を聞いたり、カタログを比較したり、商品企画の寄せ集めの情報でつくったりすること
・バリエーション、カタログスペック重視

●組織とは
・「人、時間、金」は、組織を崩壊させるもの
・組織に大事なことは、効率。人間と組織に対するアウトプットの効率。人間の効率をいかに一番よく引き出せるか
・最高の効率の仕事をするためには、この3つを徹底的に絞り込むこと
・水たまりに石を投げた時に生まれる波状のような組織が理想型
・ピラミッド型の組織でボトムアップを望むのは無理

●リーダーの育成
・リーダーが波状の組織を作る、最大効率を求める。リーダーが責任をとるという自覚を持ち続けること
・一番知っている人を一番奥に置く。何も作業はさせず、チームの財産として使う
・若い人は吸収力があるから、知らないことをどんどん教わり飲み込んでいく
・それがチームを育てるということ、未来につながること
・個人の能力をチームに生かすこと

●リーダーの仕事
・人を育てる時間を使って、自分の脳をチームメンバーに転化すること
・もどかしく難しい作業
・人づくりのステージ、商品開発のステージを明確に分ける
・到達したい目標を提示する、その「広さと時間」を示す
・組織の大きさは、出発点と到達目標ではない
・組織の大きさは、そこにおける場所と時間で決まる。人間の能力は、現状と目標のギャップに対して決まる
・「正直」と「基本」
・正直は事実。基本は原点回帰。
・革新的なことをやればやるほど、チームを守ることが重要
・計算して怒る。1年半の間、人づくりの間、怒り続ける
・怒ることの正否の境界線は、相手に対する納得性。失敗の成果を見せるか、その人のせいにするか
・組織における人の能力とは何か、を明確にすること
・チームメンバーに夢を与える、夢は可変である。
・これから発生するであろうトラブルを予測し、その対応方法を事前に決めていくこと

●チームとは
・時間もない、金もない、人も少ない、知らないが故の失敗が起こり、泥沼続き状態の中でこそ、人は腕を上げ、チームの緊張感は高まり、チームは結束して意外なほどの力を発揮する

●役割分担
・エンジニア、メカニック、ドライバーの仕事を明確に分ける
・分けるモノサシは、「時間」
・それぞれが自分で考え、自分でやり直す
・エンジニア=未来を想像して次のために仕事をする、ネタを提供し続ける、頭を動かす人
・メカニック=今あるものをベストにする、体を動かす人

●プロとは
・勝つレースは誰でも勝てる
・負けるレースをどう勝つか、どう負けないか。そこで、プロの力量が問われる
・たとえ条件が悪くても、それをどう改善していくか、いい方向にもっていくかがプロ
・「頭で見る能力」
・プロは素材を見ただけで、出来上がりをイメージできる。あとはそのイメージに向かって手を動かすだけ
・「慣れ」と絶縁する
・プロだと、なんとなくクルマは作れてしまう、「慣れ」でできてしまう
・プロの技とは、無駄のない基礎原理に基づいた技術のこと

●本当の商品づくりとは
・商品に対する「夢、想い、お客さまへの新価値の提供」は、強い志向性のリーダーが存在しないと、人は流されて、最大公約数のものづくりに入っていく、大企業の宿命
・力を生み出す根底は人間である
・誰をリーダーに据えるかが最も大事なこと、組織ではない
・最高の商品は、地球との対話の中から生まれる

●新事業への取組
・新しい仕事、当たり前の仕事には、忍耐がキーワード
・逆風の時間は長い
・エネルギーが必要
抵抗勢力が多いほと、信じない輩が多いほど、現物を出した時に驚く度合が強い、それが快感でもある

●人間の能力とは何か
・「そうぞうりょく」
・想像力でも創造力でもどちらでもいい
・記憶力=理性、理性では「こなし」しかできない
・能力とは、理性ではなく、感性
・感性ゾーンにしか、「そうぞうりょく」はない
・職人は弟子に、口ではな教えない。弟子は盗んで覚える
・盗むとは、大脳を使う、想像力を使う
・職人は弟子に、言葉ではなく、体に覚えさせる
・記憶という理性で覚えるものではない
・自分の想像力で行動しない限り、絶対に盗めない
・記憶力と想像力、この二つをはき違えないこと
・教える=記憶させる、ではない
・教える=大脳で感じさせる、この鍛錬が必要
・想像力だと、理解した瞬間にそのアプローチが変わる

●ブランドとは
・歴史をつくることは、戦うこと。戦わずしてブランドは作れない
・究極的には、そこにいる人であり、土地であり、そこで育つ文化がつくりだすもの

●新車発表発売会とは
・自分たちのスタートラインにつくための、自分たちのスケジュールとのやり方で行ってきた仕事の集大成にすぎない。
・本当に大事な仕事は、この発表をした後に待っている
・発表直後から、外のスケールでクルマがはかられ始めるから
・それまでは、あくまで内側のスケールによってしかクルマは作られていない
・発表発売は、メーカーが考えてきたことと、お金を出して買っていただいたお客様との間の差異、「目盛りの違い」を初めて知り始める瞬間
・大事なのは、自分たちのスケールと、お客様のスケールのズレを見て、それをその後の時間の中で、どう克服し、さらに改良していくか
・これからは、商品そのものを気に入るから入らないかという「質の文化」。企業はアウタースケールとインナースケールのギャップを埋めることにもっと投資していくべき
・質とは、感動の言葉。質は、スタートライン以降でないとつくり得ないし、わかり得ないもの
・アウタースケールは、お客様の心にある質

●匠の世界とは
・価値感の相違とは、感性の有無の差異
・「当たり前でしっかりしたもの」があらゆる商品の母数
・機能、装備、技術は、その母数を引き立たせる機能性でしかない
・母数の評価は、生活。その生活という母数を追求したものが「匠の世界」

●これからのものづくり
・会社中心のものづくり、人が求めているものに応えるものづくりではなく、人に新しい未来を提供することが求められる
・今をつくるのではなく、将来に、人が進化することができる「トレンドそのものの創造」が商品開発の真髄
・その基盤は、人、価値感、ブランド、ナショナリティ