アカウント・プランニングが広告を変える

読みました。

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実

アカウント・プランニングが広告を変える―消費者をめぐる嘘と真実

アカウントプランナーである堂森さんから直々に教えていただいた本。ありがとうございます。
前書から引き続きでアカウント・プランニングがテーマの本を読んでいますが、面白いですね。
これまでアカウント・プランナーの方と一緒に仕事をしたことがないので、実感がともなわないのが残念ですが、一緒にやったらどんな成果がでるのか興味津々です。メーカー内部でも消費者理解のための調査、インサイトを見つける試み、クリエイティブのラフ案テストも実施しますが、この本を読むと必ずしもうまくいっていない気がしました。どうしても目的が社内意見を通すためになりがちですから。その点、アカウントプランナーはあくまでも企業、広告代理店、消費者の3者をつなぐ役割を担うので的確に物事を正しく見られそうです。
私自身、グラフィックデザイン分野に身を置くものなので、どうしてもアートディレクターやクリエイティブディレクターがいれば問題解決!とこれまで思っていましたが、違っていたようです。
すごい世界が世の中にはたくさんあるのだと実感しました。

●アカウント・プランニング (AP) とは
・消費者を理解すること。
 消費者理解の方法は、彼らと直に話すこと。
・クライアントの現在の広告を正しい姿にすること。
・広告キャンペーンを開発する段階から消費者を参加させ、
 様々な角度から彼らの真実(インサイト)を探って、
 心のホットボタンを見つけ出すこと。
 シンプルで分かりやすい言葉で、クリエイティブスタッフに伝え、
 彼らの発想を刺激すること。
・人間性に対する鋭い洞察力、たとえ相手がカモフラージュしても、
 それを見抜く力を持ち、人間性の核心に触れられること。
・クライアントへの最大の貢献は間接的なもの。
 軍の特殊部隊のようなもの。
 一般には知られていない、表向きには存在すらしていない。
 代理店とクライアントに、賢明な意志決定のための情報を与えること。
 アイデアを絶えず出し続けることではなく、生まれさせる状況をつくること。

●最も効果的な広告を作るには
・コミュニケーションと広告メッセージ開発プロセスの両面に、
 消費者を参加させること。
 まず、彼らの感覚、生活習慣、モチベーション、不安、偏見、欲望を探る。
 どうすれば商品が彼らの生活にとけ込むかを把握する。
 彼らの頭の中をのぞき込む。
 そして、彼らの観点をコミュニケーションに取り込む。
・子供の頃、親にどうやって小遣いをねだったか、
 大人になって、どのように誰かをデートに誘ったか、
 どんな方法がうまくいって、いかなかったか。
 自分の気持ちをそのまま伝えてもうまくいかないもの。
 何をしたら、何と言ったら、相手の気持ちにこちらの想いが届くか。
・広告とは作品そのものではなく、それを見た人の頭の中で起きる反応。

●3つの観点を持つ、三角測量という航行技術
・道に迷った時に、
  (1) 方位磁石、 (2) 鉛筆、 (3) 視界に入る目印で地図にあるもの、
 その3つがあれば、現在地を地図上で正確に把握できるテクニック。
 ただし、砂漠では役に立たない。なぜ、役に立たないか?
 目印になるのものが何もないから。
 物事をうまくやるには目印が3つないと間違いを犯す危険性が高い。
・良い解決策の発見や真実の発掘には、より多くの観点を取り込むこと。
・広告には取り込むべき3つの観点。
 1.クライアントのビジネス
 2.広告代理店のクリエイティブ
 3.広告のターゲット、消費者の意見と偏見、パートナーシップ

●調査
・調査をしないということは、暗闇の中を飛行するようなもの。
 無線もコンパスも燃料系もなしに。
・調査における問題の多くは、適切な質問をしていないこと。
・調査は情報源の1つにすぎない。
 長年にわたるマーケティング、広告、人生経験に根ざした直観は、
 物事を決断する際には費用のかかる調査と同じくらい信頼に値する。
・人々の言葉と行動には大きな差がある。
 人は調査では、自分の人格や生活習慣の実態ではなく、理想像を見せようとする。
・最高のリサーチが目指すのは、消費者を受け入れること。
 彼らの考え方、感じ方、行動をより深く理解し、
 そこから得た情報や発見を利用してクリエイティブ開発をスタートさせ、
 消費者との間に広告を通じた関係形成をはじめるキッカケを作ること。

●発見する
・発見の初期段階は玉ネギの皮むき。芯に達するまで、皮を1枚づつはがす。
 しかし、皮をむくだけが玉ネギの芯に至る唯一の方法ではない。
・大きな包丁を使って、真っ二つに切ることもできる。
・発見は、他の人と同じものを見て、何か違うことを考えること。
 これがプランニングの極意。

●クリエイティビティとは
・求めるのは意味と解釈。
・できるだけいろいろな角度から真実を語ること。
・商品を真に差別化できるのは、優れたクリエイティブ表現だけ。
 
クリエイティブブリーフィングとは
・鋭い戦略的思考から素晴らしい広告への橋渡し。
 理性と感情の両面で消費者を受け入れ、
 彼らの考えからと行動の両面に影響を与える広告。
・釣船の船頭。釣り人が自分だけで釣りに行くよりも楽しく、
 しかもたくさん釣れるようにしてくれる。
 不案内な水上で最高のポイントに案内し、
 釣り糸を垂らす場所を指示し、
 どのフライを使えばいいかをアドバイスする。
・差別性が高く、ターゲットの心に届く広告キャンペーンを作ること。

●消費者テスト
・プリテストをやれば、切れ味は悪くなり、結果の予想ができ、
 危なげなくなる。
・多くのクライアントは完全に代理店を信頼していない事実。
・各自が事前に適切な仕事をしていれば、テストで警鐘が鳴ることは稀。
・消費者には現実と未来とのギャップを埋める経験も想像力もない。
 彼らに未来の調査をしても、自身の経験の範囲でしか回答できない。
・効果的なキャンペーンには、賛否両論が必要。
 良くも悪くも感情的な反応を引き起こさなくてはならない。